京都国立博物館

2000 5/22

 

私は京都国立博物館の建物がとても好きだ。

東山七条の、七条通を隔てて三十三間堂の向い側にあるので、七条通は三十三間堂へ行く観光客で賑わっているが、博物館はいつもひっそりとしている。

私の家からは、直通の交通機関がないが、約15分ほど…歩いて行ける距離だ。

小学生の頃、ここに学校から写生に行ったこともある。
その時に本館の建物を写生して、子供心に不思議な建物だなあ…と思ったことを覚えている。

ファサードを写生して、そこに書かれている文字が、文字だということは分かったのだが、何と書かれてあるのか分からない。
適当に象形文字のようなものを描いて済ましてしまったことを思い出す。

それは、「京都国立博物館」と、古い文字でレリーフされていたのだが…。

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この本館は、1895年に完成、西洋のお城のような垢抜けた、レンガ造りの外観が美しく、1969年に重要文化財に指定されたそうだ。

博物館の建物自体が重要文化財なのである。
京都は古い国宝も多いが、このようなモダンな明治建築の逸品も多い町なのだ。

私はこの建物を見る時、京都の町を誇らしく思う。
しっとりとした町に相応しい、美しい建築を、そして京都はこのような美しい建築の似合う町なのだと、誇らしくなる。

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久しぶりに―もう何十年ぶりだろうか…、行ってみたら、工事のためいつもの南門が封鎖され、メインゲートから入る…。
メインゲートは西側にあり、門を入って東に歩いてゆけば本館に行きつく。

この正門からは、多分入ったことがなかったはずだ。
そうしたら、正面の入り口のキュートな作りがまた、素敵だ。

そして、久しぶりに対面した、ロダンの「考える人」のレプリカ。

これは、本物から型を抜いた、正式な(?)レプリカなのだそうだ。
昔は雨ざらしで、ミントグリーンの錆(?)がまばらに染み出していて、とても見苦しく、かわいそうな像だったが、今はちゃんとブロンズの色をしていて、ぴかぴか光っているし、手入れをしてもらっているらしい。

そして、その右手には、灯篭の立つ和風のミニ庭園らしきものが作られてある。
本館へ行く前に、ぶらぶらとそういう所を歩いていくのが、のんびりとして楽しい。
小さなさつきの花が満開だった。

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本館の他に、別館が北側に二つ建っているが、どうということのない現代建築で、本館とはそぐわない不粋な姿をさらしている。

ここは、さらに訪問者が少ないが、しかし、何といっても京都の博物館である。
日本一国宝の多い町の博物館であるから、侮れない。
私は、ここに目を剥くようなすごいお宝が眠っているのだと、踏んでいる。

その証拠に、坂本竜馬の書簡が収められているのも、ここである。
竜馬が新婚旅行先から書いた手紙が、ここに残されているのだ。

昔、入った記憶では石器時代の銅鐸とか、埴輪などが置いてあったと思う。
じつは国宝の宗達も、ここに眠っているのである。

京都の人間は、たいがい、この博物館をさほど意識していない。
あえて今さら行こうかという気にはならないのだ。
もちろん観光名所ですらないが、このひそやかに鄙びた、だけどもハイカラな明治建築が、なぜか私は好きでたまらない。

参考資料 京都新聞2000年5月2日号

KYOTO WALK 京都国立博物館


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