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00/4/17 レジの売り子が仕事中に携帯で電話

4/17 レジの売り子が仕事中に携帯で電話

先日、例の1000円スカートを買った時のことである。

レジにいた若い女の子が、(だから彼女は即ちそこの店員である)携帯で電話をしている。
私が商品を持って行くと、携帯を肩に挟み、相手と話をしながらレジをした。
私は驚き、怒るというよりは呆れた。

携帯で話していると、途中でむげに電話を切ることは出来ない。
だから彼女は、電話の相手と話しながら、私の商品を掴み、レジを打った。
途中でさすがに相手に「今一人だから」などと理由を言い、電話を切り、以後は丁寧に応対した。
だが時既に遅しである。
私はこの行為にあまり腹は立たなかったのだが、ひたすら驚いた。
そしてあっけに取られた。
驚いたために腹を立てるのを忘れていたのかもしれない。

このショートストーリーにおいて、何が問題なのかというと、接客している最中に携帯でおしゃべりするな、ということではない。
もっと根本的なことだ。

レジ係、あるいは売り子というのは仕事である。
仕事の最中は携帯のスイッチを切っておくべきである。
それ以前に、レジに携帯を持ち込む、という行為が、そもそも間違いであろう。

彼女はよほど客が来なくて退屈していたのであろうか。
こういう場合、客の方が遠慮して、話が終わるまで少し待っていようか、と一瞬考えてしまう。
しかし、どう考えても、客が遠慮するのはおかしい。正当ではないという気がする。

***

彼女はプロフェッショナルであり、仕事の最中なのであるから、やはり、そこにプライベートを混同するのはいかにもまずい。
携帯はバッグの中に入れ、しばしそれから離れるのが、仕事をする人間の当たり前の行為なのではないか。

いつ、誰から電話がかかってくるか分からない。
だが、どのような電話であれ、それが私信であれば、仕事中、受けるべきではなかろう。
そんな簡単なことが、若者には分からないのである。
「よゐこ」の小さい方も、仕事中でも女の子の電話を待つため、スイッチをオンにして鳴らしているそうである。
まったく、分からない世の中になったものだ。

若者はそれほど、もはや携帯とは離れがたい生活をしているのだろうか。

***

こうして考察してみると、携帯は、普通の電話より、遥かにプライベート、というニュアンスが強いようだ。
仕事でやむなく使っている人もいるだろうが、若者間では携帯は圧倒的に私信であろう。
それであればこそ、それが私信であるという認識の上、私信が許されない場合は、それを所持しないというけじめが、やはりどうしても必要だと思うのだが。

仕事場は言うまでもないが、電車とか、舗道とかは、いわば公共の場であろう。
それに対して携帯という持ち物は、その場にいながらプライベートな場を作り出すという道具だと思う。
携帯は、公共の場にいたとしても、そこを瞬時にプライベートな場所へ変えてしまう。

若者は、公共の場にいても、いつでもプライベートでいたいのだろう。
社会人としての自覚云々というよりも、彼らは、もはやいついかなる時でも私人なのだ。
そこが公共の場である、ということは、念頭にないかのようだ。
彼らは一時も公けの場にいたくないのだろうか。

こういう現象は、ウォークマンが流行した時に既に予知されたことだった。
これからも、さまざまな道具の発明によって私人化は進んでゆくのではないか。
それがいいことなのか、そうでないのか、よくは分からないが。

ただ、ある人にだけはよく、その他の人にはよくない、という、差別的発明はいただけないと思うのだが。

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