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05/6/12 船岡山マンション建設の問題
05/6/27 大文字には腹が立つ

05/6/27 大文字に腹が立つ

人が何か文章を書きたくなるのは、とくに怒りをハラに含んだ時ではないだろうか。私はどうやらそのようだ。

多分、この怒りをずっとハラに溜め込んでしまうと、便秘になる。そうして、ついにはそれが爆発して、大きな××とともに○○が大量に噴出される。
怒りは溜め込むと、いつか、何倍もの量になって暴発してしまうのだ。

そういうことがないように、自浄作用として、私の場合、怒りを文章にして吐き出してしまう、一種の憂さ晴しというか、うっぷん晴らしなのかな、とも思う。
(ちなみに、「かな」というのは、最近の偉い人に流行している末尾ぼかしの喋り方だ。/笑)

 

そういうわけで、マンション問題にはとても腹を立てている。

とくに、大文字が見れない、という問題について、腹が立つ。

これはずっと昔に、とっくに諦めていたことだけれど、地方から京都にやって来て高層マンションに住んでいる人々のことを考えると、怒りがぶり返して来た。

この問題を問う前に、大文字が見れないという文の中の「見れない」は、自動詞であって、「見られない」と書くと他動詞になり、何だか他人事のようである。
らぬき言葉であるが、自分の「(人のせいで)見ることが出来ない」という気持ちを強調する意味でら抜きを使っている。
私は、とても強い気持ちで自発的に見られないことを怒っているので、これでいいのだ。

 

昔は、小学校の屋上に上れば、簡単に大文字が見られた。

私の家は下京区だが、下京でも、五山のひとつを除けば大文字がほぼ見られたのだ。

何が見られなかったのか、もう忘れてしまったが、多分妙法の法の字だったかもしれない。

地形の関係で、正大文字はほぼ横を向いていた。それ以外はきれいに見えたのだ。いい時代だった。

いつだったか、小学校の屋上は危ない、ということになって、市民が上ることを禁止されてしまった。なんでも屋上から転落事故があったらしい。それ以来、大文字は見なくなった。

そのうち、高層ビルが建ち始め、ウチの近くでは少しくらい高い所へ上っても、何も見えなくなった。どこかホテルの部屋やラウンジを、お金を払って予約しなければ見ることが出来なくなったのだ。

京都市民はケチだから、そんなにしてまで見ようと思わない。何しろ、子供のころからタダで見て来たのだ。タダで、ほとんどの大文字を見ることが出来たのだ。当たり前だ、ホテルを予約などするはずがない。
そういうことをする人は、ヨソから来る観光客である。

そのころから、大文字は観光客向けのショーに成り下がった。

だが観光客にとっては単なるショーかもしれない。けれどもネイティブな京都市民にとっては、それは夏の終りのお盆の、大事な行事である。

京都という町は、だが市民の気持ちを無視して、行事を観光化してゆくのだった。

高層マンションが、相変わらず建ち続けている。

それの謳い文句は、北野の近く、どこどこの名刹の近く、歩いてどこどこへ行ける、屋上から大文字が見える、である。

馬鹿にすな。

大文字が見えることをウリにする。これに腹が立つ。

生まれてからずっと京都に住み、平地に住んで来た地元民の感情などまるで無視して、他府県から来て、高層マンションに住む者に大文字をアピールするのか。

お前らがマンションなど作るからワシラが大文字を見られなくなったのだ。しょせんヨソから来たよそ者のくせに、大文字を独占するか。
古くから住んでいるワシラが見られなくてもお前らは平気の平左。

そらワシラは子供のころから見ているから、大人になって見られなくなっても、子供の頃の思い出で生きることは出来る。だが、平地の子供はどうだ。
京都人の現代の子供は、マンションのせいで子供時代から大文字を見れない。

よそ者のくせに、大文字なんか、オマーラにはどうでもいいくせに。

そのくせに、マンションから大文字が見えると、親戚・友人一同に大文字が見える、と自慢して、お盆になるとマンションに招待する。
そうして自分らだけ大文字を独占して喜んでいるのだ。

その影で、どれだけの京都人がそれをウラんでいるか、思い知れ、このやろう。

…だんだん激して来た。

 

大文字自体には何の落ち度もない。

大文字の保存に携わっておられる保存会の人々の努力は並大抵のものではない。

けれども、それをショーとして利用しようと考えた京都の観光業界が、なんともあさましく情けない。

大文字は、バーのラウンジや、ホテルの窓から見るものではない。デート代わりにワインを嗜みながら見るものではない。

町内の人と、ほら大の字がついた、今度は妙やで、鳥居はまだかなあ…、
そう言い交しながら見るものだ。

それを見ながら夏の終り、厳粛な気持ちになる。ただ静かに火が燃えているのをじっと見続ける。それだけのスタティックな行事。
他には何のアクションもないからこそ、その静かに燃える火に厳粛なものを感じるのだ。

ホテルやマンションの屋上で見て、そんな思いを共有出来る人がいるのかどうか。

 

05/6/12 船岡山マンション問題

船岡山は、京都市北区にあり、平安京が作られる時、造成者たちはこの山に登り、ここを起点として南へと大通りを通した。朱雀大路である。
それは現在の千本通であり、千本通をまっすぐ北に行くと船岡山に行きつく。

船岡山は、平安京という都を作る際の、基となった山である。

 

私は下京に住んでいるので、北区のことは良く分からない。船岡山の中腹にマンションが建てられることが問題になった時も、詳しい事情がよく分からず、何となくそういうことがあるらしい、くらいの感覚だった。

今でもそれほど詳しくはない。けれども、京都でマンションが建つこと自体に腹を立てている私だから、ひとこと言っておきたくなった。

 

船岡山はそんなに高くない山である。多分丘と言っていいくらいのものだと思う(行ったことがないので実物は知らないのだが)。
そこの斜面にマンションが建つことになった。
すると、周辺住民の猛反対が巻き起った。

斜面にマンションが建つと、マンション自体は平地に建てる時と同じ高さでも、斜面の分だけ高くなる。そうするとマンションによって周囲の景観が破壊されるというのだ(他にもっと理由があったかもしれない)。

平地に建てる時には規制があり、ある高さ以上の建物は建てることが出来ない、という決まりがあるようだ(それが、京都市だけのものなのか、府のものなのか、全国的なものなのか良く分からないが)。

だが、その規制は斜面を想定していない。だから、言ってみれば、業者がこの規制逃れのような形で斜面に建てようとしたものらしい。

例えば、地面から20メートル以内、ならば斜面10メートルのところに建てれば30メートルになるが、従来の規制では、これを禁止することは出来ない。
業者というものは、あらゆる手を打って、法律を逆手に取ろうとするものだ。

これに住民が怒った。ものすごく怒った。行政も見過ごせないと思ったが、業者に強制することが出来ない。
話し合いが行われ、結局マンションの業者側が建物の高さを低くすることで合意に至った。

このようにして、船岡山のマンション問題は一応解決したようだ。
(法律も改正され、斜面に建物を建てる時の規制も盛り込まれたようだ。)

 

けれども、船岡山のことは一応終わったとは言え、このような問題は、京都のあちこちで起こっている。

平等院の問題は、平等院側が「悔いても悔やみ切れない」という結末になったと記憶する。

平等院の近くにマンションが建てられた。その結果、平等院から見た景色にマンションがぬっと立ちはだかり、景観が台無しになった。

文化財建築の建物の周囲には、ここにも建物を建てる時の規制が確かあったと思うが、、周囲○○メートル以内に建てるべからず、というような、、そして、美観地区と言うように、建物のみでなく、周囲の景観も含めての保存、ということも、近年は行われているのだが、だが、京都の寺院では、「借景」を重視するということがある。

その近くだけでなく、遠い山や、林を借景として、そこから見る風景に見るべきものがあるという、風雅で雅な趣味である。
それが、その寺院と山の間にマンションが見える。

確かにマンションが建つ土地は規制の対象からは外れているだろう。だが、平等院からの風景は、見るも無残なものになった。

この場合、寺院がマンションに対してあれこれ言うことが出来ない、ということが悲しい。たかが借景のために、マンション建築を止めろと強制することは出来ないのだ。
そして、この場合は、いつの間にか、コソコソと事が進められたらしい。
気がつけば、既にストップすることが出来ない状態になっていたという。
強欲な業者のよくやる手である。

あの平等院さえ、それを止めることが出来なかった。

そのマンションに住んでいる人の気が知れない。私なら絶対に住まない。まあ住む人にもいろいろ事情があるだろうけれど。

そのマンションが、一日も早くつぶれればいいと思う。業者が赤字になり、土地を手放してくれることを望む。

平等院が建てられたのがいつかはよく知らない。多分平安時代だろうから、千年近くになるのだろう。
それがもし本当なら、千年近く建ち続けて来たのだ。これからも建ち続けるだろうし、そのために人々は努力をするだろう。あと千年くらい建っているかもしれない。

でもマンションはどうか。たぶん、20年もすればバラバラだろう。値打ちのないものはきっと滅びる。それを待つだけだ。
京都の人間は、それくらい長いスタンスでものごとを考えるのだ。

(マンション問題は、つづく)

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