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Opinion

人形集めのその後
After collecting dolls

人形を売る2

06/9/16

人形を集め始めた時には、見るものを片っ端から買っていたと思う。

見るもの見るものどれも欲しくなり、可能な限り買っていた。

そのころ､コレクターの間では２個買い､３個買いという言葉があり、コアなコレクターは、気に入った人形を２個もしくは３個買う、という人が珍しくなかった。

つまり､保存用、お飾り用（遊び用）、転売用に各１個、合計で３個買う。

私もよっぽど気に入ったものは３個買っていたこともあった。２個買うことはわりと多かった。

けれどもそういうことをしていたらすぐに経済的に行き詰まり、やめた。２個や３個あったものは、早々にオークションで売った。

　

それから、コレクションを始めたころは、「迷ったら買う」を金言としていた。

つまり、欲しいけれど買うかどうかを迷う。

見た途端欲しくてたまらなくなったものはさっさと買うが、どうしようかなと迷う人形が出て来る。

そういう中途半端な感情を持った人形については、（あとあと後悔しないために）とりあえず買っておく、ということでその場をおさめる。そういうことにしていた。

ところが最近は、「迷ったら買わない」、という風に変わった。

というより、自分からそのように変えようと思った。

　

人形に対する気持ちは変わる。態度も変わる。人形について取り決めしていたことも、そのつど自分の気持ちに正直に、変えていった方が無理がない、と気がついたためだ。

　

あまりにも沢山の人形を持つことになって、コレクションを始めた初期に単純に考えていたことには、ほころびが出て来た。

もちろん、金銭的なことと、収納場所の問題がある。

収納場所がない以上は（もちろんお金も）、増やせない。

だから、よっぽどでないと人形を買わない、というふうになってしまう。

そうすると、人形を買う基準が、昔とはだんだん違って来た。そのことに、かなり問題が出て来たのだ。

　

つまり､結論を言うと、昔は見る人形を片っ端から買っていたから、人形を買う基準が甘かった。

今なら、見ても買わないだろうような人形を、その時はそれしかないから買っていた。

だから､今買う人形と、昔買っていた人形との間で、「大事さ」に差があるのだ。

私が昔買った人形を手放すのにはそう言う理由もある。

そして、迷ったら買わない、という態度になったのも、現在、厳選して人形を買っているから、買う時の基準が厳しくなった、ということだろう。

　

もちろん、昔買った人形は、その時はそれが欲しいと思って買ったのだ。

それを売るのは気持ちが変わったとか、その人形に対して気持ちが薄くなったためではないような気がする。

もともと、それくらいの感情しかなかったのだと思う。

昔に、欲しくて欲しくてたまらない、だから買ったという人形はもちろん売らない。

買った当初から、その人形に対して感情が薄かったものから順番に売っている。

そういう人形は、例の「迷ったら買う」という形で買った人形なのだ。

そういう人形は、あとになって手放すことになる。そのことに気がついた。

だから、今は「迷ったら買わない」のだ。

私の場合、買ったことで満足してしまう「買いもの依存症」的なところもあったから。

つくづく、見境なしに買っていた自分が馬鹿だと思う。

　

そうやって人形を買う基準が変わると、昔ならこれは必ず買っていただろうなと思う人形もある。でも今はお金がないから買わない。

その時はとても残念で、後悔する。だけど、それでいいのだ。

何年かすると、買わなくて良かったと絶対に思うから。

逆に、今なら絶対に買わないような人形を、昔はどんどん買っていた。

人形と見れば見境なく、厳選せずに買っていたから、何でこんなものを買ったのだろう､と今になって後悔するものがある。

だから､今買っているものと、昔買ったものとでは、差が開いているのだ。

　

人形の基準が出来て来ると、買う時の目安になり、また売る時の目安にもなる。

昔いい加減な気持ちで買っていた人形は手放すべきだと思う。

そして、これからも今のこの基準を固定することなく、上げていくことが必要だ。

基準をどんどん上げていって、その基準に合わない人形は、買わない。持っていてはいけない。手放すようにする。

これが、私なりの人形ルールだ。

　

そして基準を上げて行くに連れて、人形の洗い出し、ということも必要だなと思う。

これまでは、売るなんて考えてもいなかった人形も、売る方のリストに入れる。

そういうことをしていかなくてはならないと思っている。

人形に対しては残酷なことだけれど、これくらいのことをするのが人形者の義務だろう。

それは、とても痛みを伴う行為で、なぜなら、かつての自分のした行ないを否定することだからだ。

良いと思って買った人形を、否定することになる。

迷って買った人形にしても、さんざん迷ってから買ったわけで、どうでもいいから買ったという訳ではないし、買う時にそれなりの感情があったから買ったのだ。

それを手放すのは、かなり無責任なことで、苦痛である。

けれども､自分に正直に、自分がいちばん納得するかたちで人形を持ち続けるために、人形の洗い出しと共に、自分の意識の洗い出しもしなければならないし、自分の気持ちが変わる、ということを、自分で認めなくてはならない。

これからも人形と付き合って行きたいのならば、そういうかたちでしか、満足の行く人形ライフは出来ないと思うのだ。

人形を売る

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