Doll Maniacs

Opinion

Made In Japan

2001 3/3

ジェニーの生産を行なっている「いわき工場」というところが閉鎖になり、ジェニーは中国生産になる、ということが報道されたようで話題になっていた。

私はジェニー関係の製造に関しては無知で、殆ど何も知らなかったので、今まで、漠然とジェニーは中国生産なのだろうなんて思っていた。

そう言えば、ジェニーの箱にはドレスは中国製です、
などと書かれてある。
ということは、ドレスは中国製だが、人形は日本製だと、そう言う意味だったらしい。
箱の隅を見ると、確かにMade In Japanの文字。

ジェニー人形は日本製だったのか。
ジェニー・ファンの人が聞いたら、ばかと思うか、無知と思うだろう。

だけど私はそんな製造がどこの国とか、そういうことには、今まで何も頓着していなかったのだ。

ひとつには、バービーが完全にMade In Chinaだからだ。

バービーは、どの箱を見ても中国製と書いてある。
だから、人形は中国製が当たり前だと思っていた。

バービーには中国はおろか、インドネシア製とかいうのもある。
だから人形が外国生産でもおかしくないと思っていたのだ。

ジェニーが経費削減のため、中国生産に切り替えられる、ということは、ジェニー・ファンの間では、中国生産になることによって、今までの日本製のクオリティが落ちてしまうのではないか、という心配につながるようだ。
中国生産になってアイペイントがルーズになってしまったということがあったようだ。

でも、バービーを見る限り、あのバービーの、細かく、品質の高い作業を見る限り、中国の製造のクオリティが良くない、ということはないのではないかというふうな気がする。

バービーの仕事は大変繊細で美しいと思う。
それと、ドイツ兵のドラゴンもメイド・イン・チャイナだ。

中国製品のクオリティが低い、ということはないと私は思う。

*

ただ、アイペイントに関する限り、バービーやドラゴンと日本のジェニーでは、まったく違うと言えるかもしれない。

バービーの目はリアルで、どちらかというと人間の目を忠実に再現しようとしているように思える。
というか、バービーの顔は人間の顔をもとにしているし、バービーの目も人間の目をもとにしている。
人間の目から発想されたアイペイントだ。
非常に健全な発想をされた人形の顔だと思う。

ところがジェニーは違うと思うのだ。

ジェニーの目は、明らかに人間の目ではない。
人間の目を忠実に再現しようとなどしていない。
あれは漫画の、アニメの目なのだ。

漫画の目の、目という記号の擦り込みがあって、そこから発想された目なのだ。
というか、目のつもりの記号なのだ。

ジェニーの顔も、人間の顔を写生して立体にした顔とは全く違う。

若い漫画家や、アニメの顔で、目が異様に大きい絵がある。

あれは、漫画やアニメの世界において、目が異様に大きい顔の擦り込みがいつの頃か日本人(の若者)に行なわれ、それが一般的だと思われてしまった結果、あの大きい目のアニメ顔がはびこってしまったのだと思われる。

新しく漫画やアニメを描く若い世代の人間は、人間の顔を写す、という本来の絵の目的からかけ離れて、人間の顔でなく、(自分以前に)それまであったアニメや漫画の(大きい目の)顔を写すという行為から始めたため、人間とはかけ離れた、異様な顔を描くようになってしまったのだと思う。

日本人の漫画家の描く人間の目が異様に大きいのと同じように、それに影響を受けたとおぼしい日本の人形も、同様に目が異様に大きくなってしまったのだ。

*

たとえ日本の隣の中国でも、日本のように目を異様に大きく描く、という伝統はなかったのだと思う。

中国人も、目を描く時は、ごく普通に人間の顔から忠実に目を描こうとするのだと思う。
だから、バービーを描くのは中国人にも簡単に、上手に描けるのではないか。
世界的に、そういう描き方が当たり前だからだ。

しかし、日本は違うのだ。

やたらに目が大きく、目の描き込み作業が異様に細かい。
星がいくつも入っているし、大きな目の中にこれでもかと濃淡をつける。
逆に、目が大きくないとこれだけの情報を目の中に描き入れる事が出来ない。
しかも人間の目からは考えられないほどまん丸で、白目が殆どない。
目の位置にあるから目だとかろうじて分かるが、そうでなければ目だとは到底思えない(笑)。

日本人は、このように目を異様に強調して描く。

この異様さに、中国人(の彩色者)は違和感を覚えるのではないだろうか。

それに比べれば、バービーの目は単純だ。
人間の目を写しているからサンプルなどなくても、目という人間の共通のコンセンサスさえあれば記憶で描き込む事が出来る。
しかしジェニーのそれには、コンセンサスは通用しないのだ。

テクニック的には、彼らに不可能はないと思う。
描こうと思えば、これからいくらでも描けると私は思う。

ただ、この日本人独特の、目の異様なまでの強調の仕方に、とまどいと抵抗を感じているのではないか。
そんな気がしてならない。

[ Doll's Column | Doll Maniacs | HOME]