Review | Movie Maniacs

The Glory
グローリー
1989

A film by Edward Zwick

監督 エドワード・ズウィック

主演 マシュー・ブロデリック デンゼル・ワシントン モーガン・フリーマン

04/3/6 rewrite on 07/5

04年に「ラストサムライ」と一緒に書いたレビューを加筆訂正しました。
ネタばれあります。

 

「グローリー」は1989年の映画で、監督は「戦火の勇気」「ラストサムライ」などのエドワード・ズウィック。

主人公と黒人部隊は実在の人々で、実話を元にしている。戦場に命を散らした若者の悲劇を描いた戦争映画としてくくられると思う。

この映画を賞賛するのは、ひとえにマシュー・ブロデリックとデンゼル・ワシントンの関係が美しいからである。

*

 

ころは南北戦争。

北軍に、黒人ばかりで出来た部隊が作られる。それを指揮する北軍の白人将校が主人公・マシュー・ブロデリック。

良いとこのお坊ちゃんで世間知らず。だが理想主義で、黒人兵士との軋轢にもめげず、健気に黒人兵たちの訓練に励む。

北軍は、黒人奴隷の解放を謳っていた。だが実情は、北軍の軍隊にさえ黒人に対する差別が根強く残っていた。

戦略として黒人部隊を軍隊に編入することにした北軍だが、黒人部隊は激しく差別され、いじめられていた。

マシュー大佐は黒人たちの待遇改善を求め孤軍奮闘し、やがて黒人兵たちとも打ち解け合う。

 

映画の終章、北軍は南軍との雌雄を決するフォート・ワグナーの戦いに挑むことになった。

マシュー大佐は、北軍の総司令官に、思わず自分の部隊を先鋒にと志願する。
それは重要だが、行ったら決して生きて帰っては来られぬと覚悟をせねばならないポジションだ。

あえて、みずからそれを志願するマシュー大佐。

黒人兵士たちは喜ぶ。自分たちにやっと、仕事の出来る場を与えられたからだ。

その日、彼ら黒人部隊が先陣として出発する、その行進を見つめながら、かつて彼らを、同じ北軍兵同士でありながら、差別し軽蔑していた白人兵士が最敬礼で送り出す。

この場面、あざといとは分かっていながら、つい涙せずにはいられなかったものだ。

そして、泰西名画のように美しく、かつ残酷な戦争場面が始まる…。

 

膠着状態に業を煮やしたマシュー大佐が、攻撃を決意する。自分一人で先にたち、敵の的になった。銃弾に倒れる大佐。

彼と対立し、決して大佐の言うことを聞こうとしなかった、一人の黒人兵士。
大佐が旗手にと推挙しても断わった黒人兵(デンゼル・ワシントン)は、マシュー大佐が倒れた途端、近くにあった旗をむんずとつかんで、自ら攻撃に突き進んで行くのだった…。

この戦場場面の臨場感。…ときめきと陶酔。

デンゼル・ワシントンはこの演技でアカデミー賞の助演男優賞をもらった。アカデミーの撮影賞(フレディ・フランシス)ももらった。美しい画面だった。

 

最後は全滅だ。主人公たちの部隊は全滅する。

マシュー大佐も、デンゼル・ワシントンも、他の黒人兵たちも、みな戦場に散り、同じ穴に十把ひとからげに埋められる。

ラスト。

マシュー・ブロデリックの死体の横に、デンゼル・ワシントンの死体が投げ入れられる。
ふたりはまるで、寄り添うように墓穴の中に葬られる。頬を、ぴったりと添わせて…。

史実では、白人と黒人が同じ墓穴に葬られることはなかったという。が、監督は史実をあえて変えて、このようなラストにした。

私の中の、やおい魂がむくむくと頭をもたげた。

 

そう、この映画、実はマシュー・ブロデリックと、デンゼル・ワシントンとの愛の物語でもあったのだ!(殆どこじつけ)。それゆえに、私はこの映画を胡散くささを百も承知で、賞賛するのだ。

デンゼル・ワシントンは、実は密かに、美しい白人将校を愛していたに違いないのだ(だってマシューだもん)。

墓穴の中で、ぴったりと頬を寄り添わせた二人の亡骸。それが「グローリー」というストイックな映画の唯一のラブシーンであった。

「グローリー」には、見事なまでに女が出ていない。それがまた、逆に官能をいっそう昂めていた。

 

デンゼル・ワシントンが鞭打たれた背中あとをマシューに見せつける場面もあったのだ。

かつて、黒人奴隷として使役させられていた彼。奴隷として、いかに虐待されていたかを、坊ちゃん育ちのマシュー大佐に思い知らせる場面だ。

妙に官能を感じたのは、私の頭が腐女子の腐れ頭だったからだけではないだろう。

 

この映画に胡散臭さを感じるのは、思想的に、戦争賛美だとかいう以前に、男同士のこのような関係に、作者(監督)が「美」を見出しているからだと思うのだ。

撮影監督にフレディ・フランシスを起用して、美しい画面を作り出しているのにもそれを感じる。

男たちのストイックな生き方が美学であり、その関係も美である。

いっけん普通の戦争映画に見える作品に、このような美学を垣間見ることが出来るのは、我々やおいの望外な喜びだ。

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